まんまるなおと

感じることを感じるままに。思いつくことを思いつくままに。

とぅるーすチェイサー

 

ぼくは小学6年生の女の子。

いや、ほんとうは、

そう書くのは嫌なんだけど、

背負っているランドセルは赤いし、

こせき上もそうなっているらしいので、

そう言うしか ないじゃないか

 

ふん。

 

ぼくには大の親友がいて

そいつも女の子。

たしかあいつは自分のこと おれ って言ってた気がするけれど

 

きっと

あいつは 女の子って

言っても 嫌じゃないはず。

 

ものすごく偏屈で、天邪鬼で、

些細なことでぼくに いちゃもん をつけてくる、

嫌なやつだけど

 

ほんとうにものごとをよく考えるし

じぶんで見つけたほんとのことは

誰になんと言われても

貫く強くてかっこいいところもある

 

ぼくは あいつの そういうところと

馬が合って よく一緒にいるんだ

 

ぼくらはふたりとも

シャーロックホームズが好きで

あいつの両親がやっている

コンビニエンスストアの裏にある

物置の屋根の上に

秘密基地みたいな

事務所を構えて

少年探偵団をやっているんだ

 

その名も “とぅるーすチェイサー”

 

真実を追い求める者って 意味だ

頭文字のTCでロゴまで作ったんだぜ

 

ぼくらが ふだん なにをしているかといえば

早朝の誰もいない町を

ローラーブレードでパトロール

 

誰もいない朝の町は

なんだか特別で

ちょっぴり涼しくて気持ちのいい風を感じられるんだ

 

まだ だれも 足跡をつけていない

真っ白な世界に

いちばんに 泳ぎ出すみたいな

すてきな気分になれるんだぜ

 

ぼくは起きるのが苦手だから

いつもちょっとしんどいんだけど。

 

なぜ ローラーブレードか?って。

 

その方が 楽だし 楽しいからさ!

 

ぼくらは ときに

好きな女の子の家までこっそり行って

バラの花一本なんかを入れてきたり

 

友だちの家にこっそり行って

ぼくらの考え出した暗号で書いた手紙を

ことんとポストに入れてきたり する

 

だって

それをみた時のあの子は

どんな気持ちがするだろう?

どんな顔をするだろう?

 

ぼくらの気持ちが届くかな?

ぼくらの言葉がわかるかな?って

 

そんな心地は

たまらなく素敵だからさ。

 

そうやって

好きな子や

好きなやつの1日の中に

 

ちょっぴりの嬉しい や

ちょっぴりのびっくり や

ちょっぴりの なぞ を

 

お届けしているその感じが

たまらないんだ

 

変わっているかい?

 

やめておくれよ

ぼくは 変わっていると言われるのは

得意じゃないんだ

 

泣いちゃうぞ

 

もし言ってくれるなら

特別 と 言っておくれよ

そしたら 嬉しい

 

とぅるーすチェイサーのおしごとは

口コミで依頼が入るのだけれども

ぼくらは

ともだちが多くないもんだから

とぅるーすチェイサーを知ってる人も

ごくわずか。

 

となれば、依頼自体も

ごくごく僅かだ。

 

給食用の箸箱を失くしたから見つけてほしい とか

猫がいなくなったから探して欲しい

とか

くらいかな。。

 

依頼が入ったのは嬉しかったけど、

それらはあんまり面白くなかったから、

結果どうなったかは

あんまり覚えてないや。

 

だから、つまりは、だいたい、

頼まれてもいないこと、

好き勝手に

やっているのさ。

 

〜〜〜

 

さてさて。

時間は飛んで。

 

ぼくは いま 40さい。

どこにも属していない。

赤いランドセルは背負っていないけど

戸籍は変えていない

 

ぼくは 絶対 女性とは言いたくない

男性とも言いたくない

 

ぼくは ぼくだ

 

そう言えるだけ

ぼくは逞しくなったのかもしれないし

何周か回って

元に戻ってきたのかもしれない

 

ぼくは いま たまたま 

生まれたこの町にいる

 

ローラーブレードは履いていないけど

やたらめったら

この町を歩き回ってる

 

ぼくは ずっと ひとりで

とぅるーすチェイサー

やってきたんだな なんて考えながらね。

 

ぼくというニンゲンは

どんなことが好きで

どんなことが嫌いで

どんな瞬間を味わいたくて

いまここに生きているのか

ぼくがぼくに寛ぐとは どういうことか

 

ひとを愛するということ

ひとはどこに向かうのかということ

ぼくとぼくの大切なひとにとって

どんなことが大切で

真ん中にあるのかということ

 

ぼくは

とんだ見当違いのこともやりながら

その時々で最大限に

心地悪さ 不快感を味わっては

 

本来の ぼくのカタチに 日に日に

戻ってる

 

ぼくはぼくであるだけで幸せで

ぼくがぼくに寛ぐだけで

大好きな人を

幸せにするパワーがみなぎってくる

 

あんな顔が見られるかな?

こんな顔が見たいな!って

 

心躍らせて

胸高鳴らせて

小さな幸せを思う存分に

カラダいっぱいに

感じてる

 

ぼくは

ますますぼくにもどってく

とぅるーすをチェイスしながらね

 

あいつもどこかで そうしているのかな?

 

どうやら

解決することのないミステリーが

あるってことは

ぼくへの

素敵なプレゼントのようだ

 

これを読んでくれているきみの顔に

嬉しさ か 驚き か ? か

 

何か が

 

あってくれたらなって、、、

 

そんな風に

思いながら

ぼくは

むかしもいまも

相変わらずに

生きているんだよ