都会の一等地に
それは立っている
シンプルで品のいい
緑あふれる高級マンション。
まんまるマンション。
エントランスのところには
とってもカッコいい門番のひとが
両脇にふたり。
入ってすぐの
右手にコンシェルジュが
笑顔で座る
ホテルのフロントのようなところがある。
マンションというより
ホテルに帰ってきたかのようで
帰るたびに
嬉しくなる。
このマンション、
頼めば ルームサービスもできるし
お部屋の清掃もしてもらえる
あ、
なんなら、
こどもを見てくれる信頼できるナニーも
フロントに言えば手配してくれるし
話し相手や
遊び相手
のみ相手がほしいときにも
最高の相性の“トモダチ”を
手配してくれる
マンションの住人は ほんとに
多種多様で
大学の教授
弁護士
医者
看護師
YouTuber
庭師
コック
どこかの社長
スポーツ選手
アーティスト
小学生
中学生
高校生
大学生
フリーター
既婚者
独身
バツイチ
バツニ
宇宙飛行士
パイロット
船長
漫画家
引退後の老夫婦
異性カップル
夫婦
こども
おとな
なんでもないひと
猫
活動家
投資家
ラーメン屋
デザイナー
先生
農家
芸能人
小説家
カメラマン
映画監督
サラリーマン
引きこもり
とまあ、あげればキリがない。
マンションの外に出れば
みな それぞれの関係を持ち
それぞれの顔を持ち
それぞれの立場を持ち
それぞれの居場所をもつ。
ない人もいるが。
がしかし、
一歩、
ステキな門番さんに迎えられて
マンションの敷地内に入れば
みな
“ただのヒト”になるのである
とても
素直で
優しく
それぞれに
独特の世界観を持った
“ハダカ”のニンゲンになる
ただ存在し合うことを
感じ
喜び
振動し合う。。
じぶんのいえで
たったひとりの時間をすごすとき
ほかのどこかで
同じように いまを生きている
ヒトがいることを
どこかで感じる
ちゃんと孤独だが、
なぜだか 嬉しくなる
廊下ですれ違うとき
たとえ
あいさつも
会釈もなくとも
なにかを、感じ合って
嬉しくなったりもする
こんなにも
ヒトが
いるのに
マンションの中は
静かで
風が通り
心地よく
わたしは
わたしに寛ぐことができる
マンション内にあるバーで
夜景を眺めながら
薄いガラスでおいしいビールを飲むのが
わたしは好きだ
隣り合った人 と 話が深まることもあれば
たったひとりで
洗練されたバーテンダーさんの
動作を眺めることもある
マンション内にある
レストランで
宴が巻き起こることもある
わたしは
そこに入るのも
そっと抜け出すの好きである
このマンションで
いちばん好きなところは
天然の木でできたホールに
ステージがあり
マンションの住人が
それぞれに
それぞれの
うたを歌っている 光景に
出会えることである
わたしも
ステージに上がるのが
大好きだ
その人のうたは
その人を
感じるステキな方法だなぁって
いつも思う
マンションに入れば
みんな
“ハダカ”の“ヒト”になるけれど
それでも
もっと
それぞれのヒトの中に
無限にひろがる宇宙を
より
豊かに
感じることができる
と
同時に
あの人がわたしであり
わたしがあの人である
という
なんともいえない
すてきな心地にも
なったりする
うたはすごい
〜〜〜
わたしにとって
この世界が
まんまるマンションで
ありますように。